2023年10月26日

研修医アンマッチ体験記

『あなたはいずれの研修プログラムともマッチしませんでした。』

研修医マッチングサイトには、ただ空虚な一文が記載されていました。私はアンマッチになったのです。

もっと多くの病院を登録すべきだったか、もっと面接や試験を対策するべきだったか、もっと人気の動向を察知するべきだったか。

様々な後悔に押しつぶされ、無職になる焦りに駆り立てられるがまま、新たな研修先を探し始めました。

インターネットで空席情報を調べればすぐに出てきましたが、探せば探すほど、もっと良い病院があるのでは?というジレンマに陥り決めきれません。一次マッチへの未練、試験勉強の合間に探すストレス、同期に対する劣等感が心をざわつかせ、焦りは増すばかりでした。

一旦冷静になろう。

闇雲に病院を探していた私は、自分にそう言い聞かせ、条件を洗い出しました。

  1. 産業医になる将来を見据えて、東京へのアクセスが良いこと。
  2. 企業勤務の前に、幅広い症例を経験できること。
  3. 奨学金返済の為に、給与が良いこと。

同期からはもっと妥協しろと呆れられましたが、どうしても譲れませんでした。

勉強の合間にSNSを眺めていた時、新潟県研修病院紹介の記事が目に止まりました。瀬戸内海出身の私は今まで日本海側には全くゆかりもありませんでしたが、何かの縁と思い読むことにしました。新潟県は新幹線で東京へのアクセスが良く、医師少数県で研修医1人あたりの症例も充分、東京よりも給与が格段に良い、と条件はバッチリ満たしていました。中でも、離島の佐渡の場合は島唯一の急性期病院で幅広い症例を持ちながら、救急外来で研修医がfirst touchで,正にコレだと雷を打たれました。気がついたら病院へ申し込んでいました。

実際に研修が始まると、一人の医師として扱われる部分に驚きました。病院を探している時、『プライマリ・ケアを学べる』、『手技経験豊富』などありきたりな文はあちこちで見てきましたが、医師として扱う病院はあまり無かったと思います。そのおかげか、責任感も感じて必死に勉強し、できなかったことができるようになり、医師としての成長を感じています。

一方で、勢いで来てしまった佐渡の離島生活で、引っ越した頃は不安なことも沢山ありました。ですが、病院付近は町の機能がある程度集約化おり、意外にも生活に困りませんでした。他にも、海や山、島独特の文化財、美味しい飲食店が豊富で、週末は同期と島中を探検しています。また、同期だけでなく、実習の医学生や地域研修の研修医が多く来るため、交流も充実しています。

ひょんな事から佐渡島で研修することになった身ですが、ここで研修できる縁を大事にしていきたいと思っています。