2026年10月21日

秋は夕暮れといふなれど

私は夜の22時くらいに外を走るのがとても好きだ。昔の人は「秋は夕暮れ」と言ったものだが、更に時の移った夜もまた風情がある。日が入り果てて、夜と溶け合った大佐渡小佐渡の山の端を眺めながら走るのもまた良い。とりわけ金井温泉のあたりで空を見上げると澄み渡る夜空に輝く星々の中へ時折吸い込まれそうになる。どデカいキャンバスを横断する天の川。街中ではその輝きを独占しているオリオン座もここでは他の星と調和している。星の明かりを頼りに真っ暗闇の登り坂を走る時の高揚感は疲れを忘れ、まるで宇宙飛行士にでもなった感じすら覚える。走り終えた後の達成感は言うべきにあらず。

『プラネテス』という宇宙を描いた近未来SF漫画の主人公•星野八郎太が、地球で事故を起こし生死を彷徨い、病院で悟りを開き「ここも宇宙なんだ」と呟くシーンがあります。この漫画を読んだのは10年くらい昔で、長らく忘れていましたが走っている最中によく思い出します。

一言メモ 佐渡は宇宙だ。

さて、私は佐渡へ来てもう1年半が経ってしまいました。当初は医者という重い肩書きだけ背負った何もできない医学にちょっと詳しい人でした。今も何かできるようになったとはあまり思えず、無力感を覚えたり、説明下手な自分に嫌気がさすこともしょっちゅうあります。ただ、以前を思い返すとほんの少しだけ進んでいるのかな?と思える部分もあります。走っているときと同じように、歩みを止めないことが重要だと思いこみ足掻いております。ただし、ときに医学では走っているつもりが違う道に進んでしまっていた、ということはよくあります。ノーベル医学生理学賞を受賞した医学的手法ですら現代では「間違った医療を推進した」と認識されているものもありますから、常に振り返って考えることが重要なのだと思います。
もっとも、私はまだそんなスケールの大きい話以前の段階で、研修医レベルの仕事すら足元も覚束ないことがいっぱいあります。ちょっとできるようになったと思っていたら全然できてなくて、それでも進んでの繰り返しです。これからも多分ずっとそうです。過去を振り返ってばかりでは前に進めないけど、辿ってきた道のりを振り返って自省したり、足元が大丈夫か確認したり、ときには成長している部分を見直すことは自分にとっても周りにとってもいいことではないかな、と信じております。
もうほんの少しでも佐渡の皆様に貢献できるように自省し、走っていきたいと思っております。

最後に佐渡について2点PRします!
•佐渡島には熊も猪も猿もいないため、山道でランニングができます。歯科の某先生は人通りの少ない坂道でスノボーの練習をしまくっていたという。しかし、夜は真っ暗ですので側溝に落ちそうになったり木の枝を踏んづけて転けそうになったりといった危険はあるので注意は必要です。
•佐渡には珍しい野菜や果物も多いです。病院の近くにあるCOOP金井店併設の「よらんか舎」で野菜や果物を眺めるのが楽しく、日課になっています。10月といったら黒イチジク(小木ビオレー)が旬。その上品な甘さは筆舌しがたい、皮まで食べられる点も良いです。10月ではもう見なくなりましたが白イチジク(白というか緑っぽい色してます)が甘く、あっさりした食べごたえでパクパク食べてしまいました。イチジクだけで数種類並んでいることもあり、かつ自分が手を出せなかった野菜•果物は他にもいくつもあります。佐渡にいらしたら是非色々探してみて下さい。

2026年10月某日 初期研修医2年目 T