2018年7月13日

研修医ブログ(井口 先生)

写真1 写真:岩首昇竜棚田

この島に引っ越してきて島民になったのが3月末。花見をして、祭りを楽しみ、絶品の魚介に舌鼓を打ち、カンゾウの花を愛でて、ドンデン山に登り…そうこうしているうちに気づけばもう2ヶ月ちょっと経っていた。

特別な地縁があるわけでもなく、友人知人がいるわけでもなく、全くのひとり(と愛猫1匹)でこの島にやってきた。フェリーに乗り込んだ時は「本当に始まるんだなあ」とフワフワした気持ちで、いよいよ近づく島を眺めた。学生の頃に1年間アフリカを放浪したことがあったが、あの頃1つの国境を超える度に感じた、不安と期待と興奮とちょっとした後悔とそんな色々の逡巡に似ているような気分だった。

写真2 写真:フェリーに乗る愛猫

佐渡の生活は、「ある」ものは「ある」し、「ない」ものは「ない」。そんな当たり前のことに満足感を覚えながら営む生活は素朴な手触りがあって、「足るを知る」ことを教えてくれる。「幸福な生活は、おおむね、静かな生活でなければならない。なぜなら、静けさの雰囲気の中でのみ、真の喜びが息づいていられるからである」、B.ラッセルは「幸福論」でそう述べているが、なんとなく分かる気がする今日この頃だ。

写真3 写真:ドンデン山から夕焼けを眺める僕

知り合い1人いなかったこの地で、起こること出会うこと全てにあるがままの自分で向き合えている。「今、俺はここにいるのだ」と言い切れる、そんな確かな満足感がある。医師としてのスタートの日々をそう感じられる場所で過ごせる、こんな贅沢はないし、そんな初心とちっぽけな矜持を忘れず精進していきたい。